わかれみち
わかれ道

冒頭文

上 お京(きやう)さん居ますかと窓の戸の外に來て、こと〳〵と羽目を敲(たゝ)く音のするに、誰れだえ、もう寐て仕舞つたから明日來てお呉れと嘘を言へば、寐たつて宜いやね、起きて明けてお呉んなさい、傘屋の吉だよ、己(お)れだよと少し高く言へば、嫌な子だね此樣な遲くに何を言ひに來たか、又お餅(かちん)のおねだりか、と笑つて、今あけるよ少時(しばらく)辛棒おしと言ひながら、仕立かけの縫物に針どめして立

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 日本現代文學全集 10 樋口一葉集
  • 講談社
  • 1962(昭和37)年11月19日