にゅうせんしょうせつ「どく」について
入選小説「毒」について

冒頭文

この作品は「新聞配達夫」とは又別の意味で一気に終りまで読ませ、しかもなかなかひきつけるところのある作品である。病苦をめぐる良人の感情、妻の感情など素直にひたむきに描れているし、淫売屋での二人の女の会話のところなども自然であるために、すぐその前の、考えて見ればグロテスクな場面もいやらしくなくなり、情がうつ(ママ)ている。 そこまでは各選者とも一致した意見であったが、同時に、この作品を特にす

文字遣い

新字新仮名

初出

「文学評論」1934(昭和9)年10月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日