きんいろのあきのくれ |
金色の秋の暮 |
冒頭文
十月三十一日 晴 起きてみると誰の姿も見えず。庭の方でYとSさんらしい声がする。顔を洗っていると、さだが「おや」と裏の方から出て来た。 雨戸にかんかん日がさしている。芝生で椅子を並べ、Sさん、Yが支払いの帳面しらべをする手伝いをさせられていた。昨日、K先生のところへ行かれた由。風邪をこじらせて二階で夜着を顎まで引上げて寝ていた。「病気をしていらっしゃると何だかお気の毒でねえ」
文字遣い
新字新仮名
初出
「サンデー毎日」1927(昭和2)年1月1日号
底本
- 宮本百合子全集 第十七巻
- 新日本出版社
- 1981(昭和56)年3月20日