おにごっこ
鬼ごつこ

冒頭文

彼は或町の裏に年下の彼女と鬼ごつこをしてゐた。まだあたりは明るいものの、丁度(ちやうど)町角の街燈には瓦斯(ガス)のともる時分だつた。 「ここまで来い。」 彼は楽々と逃げながら、鬼になつて来る彼女を振りかへつた。彼女は彼を見つめたまま、一生懸命に追ひかけて来た。彼はその顔を眺めた時、妙に真剣な顔をしてゐるなと思つた。 その顔は可也(かなり)長い間(あひだ)、彼の心に残つてゐた

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 筑摩全集類聚 芥川龍之介全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 1971(昭和46)年6月5日