僕は一高へはひつた時、福間(ふくま)先生に独逸(ドイツ)語を学んだ。福間先生は鴎外(おうぐわい)先生の「二人(ふたり)の友」の中のF君である。「二人の友」は当時はまだ活字になつてはいなかつたであらう。少くとも僕などのそんなことを全然知らなかつたのは確かである。 福間先生は常人よりも寧(むし)ろ背(せい)は低かつたであらう。何(なん)でも金縁(きんぶち)の近眼鏡(きんがんきやう)をかけ、可