ししゅう
詩集

冒頭文

彼の詩集の本屋に出たのは三年ばかり前のことだつた。彼はその仮綴(かりと)ぢの処女詩集に『夢みつつ』と言ふ名前をつけた。それは巻頭の抒情詩(ぢよじやうし)の名前を詩集の名前に用ひたものだった。  夢みつつ、夢みつつ、  日もすがら、夢みつつ…… 彼はこの詩の一節ごとにかう言ふリフレエンを用ひてゐた。 彼の詩集は何冊も本屋の店に並んでゐた。が、誰も買ふものはなかつた。誰も? ——い

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 筑摩全集類聚 芥川龍之介全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 1971(昭和46)年6月5日