ゆき

冒頭文

或冬曇りの午後、わたしは中央線(ちうあうせん)の汽車の窓に一列の山脈を眺めてゐた。山脈は勿論(もちろん)まつ白だつた。が、それは雪と言ふよりも山脈の皮膚に近い色をしてゐた。わたしはかう言ふ山脈を見ながら、ふと或小事件を思ひ出した。—— もう四五年以前になつた、やはり或冬曇りの午後、わたしは或友だちのアトリエに、——見すぼらしい鋳(い)もののストオヴの前に彼やそのモデルと話してゐた。アトリ

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 筑摩全集類聚 芥川龍之介全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 1971(昭和46)年6月5日