しょうこせいぼ
商賈聖母

冒頭文

天草(あまくさ)の原(はら)の城の内曲輪(うちくるわ)。立ち昇る火焔。飛びちがふ矢玉。伏し重(かさ)なつた男女の死骸(しがい)。その中に手を負つた一人の老人。老人は石垣の上に懸けた麻利耶(マリヤ)の画像を仰ぎながら、高声に「はれるや」を唱(とな)へてゐる。 忽ち又一発の銃弾(じうだん)。 老人はのけざまに仆(たふ)れたぎり、二度と起き上る気色は見えない。白衣の聖母は石垣の上から

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 筑摩全集類聚 芥川龍之介全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 1971(昭和46)年6月5日