おれは沼のほとりを歩いてゐる。 昼か、夜(よる)か、それもおれにはわからない。唯、どこかで蒼鷺(あをさぎ)の啼く声がしたと思つたら、蔦葛(つたかづら)に掩(おほ)はれた木々の梢(こずゑ)に、薄明りの仄(ほの)めく空が見えた。 沼にはおれの丈(たけ)よりも高い芦(あし)が、ひつそりと水面をとざしてゐる。水も動かない。藻(も)も動かない。水の底に棲(す)んでゐる魚も——魚がこの沼に