とうきょうしょうひん
東京小品

冒頭文

鏡 自分は無暗(むやみ)に書物ばかり積んである書斎の中に蹲(うづくま)つて、寂しい春の松の内を甚(はなはだ)だらしなく消光してゐた。本をひろげて見たり、好(い)い加減な文章を書いて見たり、それにも飽きると出たらめな俳句を作つて見たり——要するにまあ太平の逸民(いつみん)らしく、のんべんだらりと日を暮してゐたのである。すると或日久しぶりに、よその奥さんが子供をつれて、年始旁々(かたがた)遊びに

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 筑摩全集類聚 芥川龍之介全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 1971(昭和46)年6月5日