まど

冒頭文

——沢木梢氏(さはきこずゑし)に—— おれの家(うち)の二階の窓は、丁度(ちやうど)向うの家(うち)の二階の窓と向ひ合ふやうになつてゐる。 向うの家の二階の窓には、百合(ゆり)や薔薇(ばら)の鉢植が行儀(ぎやうぎ)よく幾つも並んでゐる。が、その後(うしろ)には黄いろい窓掛が大抵(たいてい)重さうに下つてゐるから、部屋の中の主人の姿は、未(ま)だ一度も見た事がない。 おれの

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 筑摩全集類聚 芥川龍之介全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 1971(昭和46)年6月5日