しょくもつとして
食物として

冒頭文

金沢(かなざは)の方言(はうげん)によれば「うまさうな」と云ふのは「肥(ふと)つた」と云ふことである。例へば肥つた人を見ると、あの人はうまさうな人だなどとも云ふらしい。この方言は一寸(ちよつと)食人種の使ふ言葉じみてゐて愉快である。 僕はこの方言(はうげん)を思ひ出すたびに、自然と僕の友達を食物(しよくもつ)として、見るやうになつてゐる。 里見弴(さとみとん)君などは皮造りの刺

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 筑摩全集類聚 芥川龍之介全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 1971(昭和46)年6月5日