しょうせつのどくしゃ
小説の読者

冒頭文

僕の経験するところによれば、今の小説の読者といふものは、大抵(たいてい)はその小説の筋を読んでゐる。その次ぎには、その小説の中に描(か)かれた生活に憧憬(しようけい)を持つてゐる。これには時々不思議な気持がしないことはない。 現に僕の知つてゐる或る人などは随分(ずいぶん)経済的に苦しい暮らしをしてゐながら、富豪や華族ばかり出て来る通俗小説を愛読してゐる。のみならず、この人の生活に近い生活

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 筑摩全集類聚 芥川龍之介全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 1971(昭和46)年6月5日