むだい
無題

冒頭文

わたくしはけふの講演会に出るつもりでゐましたが、腹を壊してゐる為に出られません。元来講演と云ふものは肉体労働に近いものですから、腹に力のない時には出来ないのです。甚だ尾籠(びろう)なお話ですが、第一下痢(げり)をする時には何だか鮫(さめ)の卵か何かを生み落してゐるやうに感ずるのです。それだけでももうがつかりします。おまけに胃袋まで鯨(くぢら)のやうに時々潮を吐(は)き出すのです。そこで友人佐佐木茂

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 筑摩全集類聚 芥川龍之介全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 1971(昭和46)年6月5日