しゅうしょ
蒐書

冒頭文

元来僕は何ごとにも執着(しふぢやく)の乏しい性質である。就中(なかんづく)蒐集(しうしふ)と云ふことには小学校に通(かよ)つてゐた頃、昆虫の標本(へうほん)を集めた以外に未嘗(いまだかつて)熱中したことはない。従つてマツチの商標は勿論(もちろん)、油壺でも、看板でも、乃至(ないし)古今(ここん)の名家の書画でも必死に集めてゐる諸君子(くんし)には敬意に近いものを感じてゐる。時には多少の嫌悪(けんを

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 筑摩全集類聚 芥川龍之介全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 1971(昭和46)年6月5日