一 古今実物語 一 大阪の画工北璿(ほくせん)の著はせる古今実物語(ここんじつものがたり)と云ふ書あり。前後四巻、作者の筆に成れる揷画(さしゑ)を交(まじ)ふ。格別稀覯書(きかうしよ)にはあらざれども、聊(いささ)か風変(ふうがは)りの趣(おもむき)あれば、そのあらましを紹介すべし。 古今実物語は奇談二十一篇を収む。その又奇談は怪談めきたれども、実は少しも怪談ならず。