一 中村武羅夫(なかむらむらを)君 これは君の「随筆流行の事」に対する答である。僕は暫(しばら)く君と共に天下の文芸を論じなかつた為めか、君の文を読んだ時に一撃を加へたい欲望を感じた。乃(すなは)ち一月ばかり遅れたものの、聊(いささ)か君の論陣へ返し矢を飛ばせる所以(ゆゑん)である。どうかふだんの君のやうに、怒髪(どはつ)を天に朝(てう)せしめると同時に、内心は君の放つた矢は確かに