はなよめのていせい ――ふうふてつがく――
花嫁の訂正 ――夫婦哲学――

冒頭文

1 二組の新婚夫婦があった。夫同士は古い知己で隣合って新居を持った。二軒の家は、間取りも、壁の色も、窓も、煙突も、ポオチもすっかり同じで、境の花園などは仕切りがなく共通になっている。 一週間経つと花嫁と花嫁とも交際をはじめた。 「——お隣の奥さん、今日も一日遊んでいらしたのよ。」 そうAの細君が、勤めから退けて来たAに報告(おしえ)るのであった。 「二人で、どんな話をして遊ぶんだい?」

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」1929(昭和4)年9月

底本

  • アンドロギュノスの裔
  • 薔薇十字社
  • 1970(昭和45)年9月1日