きむずかしやのけんぶつ ――おやま――へびつかいのおきぬ・おののこまち――
気むずかしやの見物 ――女形――蛇つかいのお絹・小野小町――

冒頭文

伝統的な女形と云うものの型に嵌って終始している間、彼等は何と云う手に入った風で楽々と演(し)こなしていることだろう。きっちりと三絃にのり、きまりどころで引締め、のびのびと約束の順を追うて、宛然(さながら)自ら愉んでいるとさえ見える。 旧劇では、女形がちっとも不自然でない。男が女になっていると云う第一の不自然さが見物に直覚されない程、今日の私共の感情から見ると、旧劇の筋そのものが不自然に作

文字遣い

新字新仮名

初出

「新演芸」1923(大正12)年7月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日