ジムバリストをきいて
ジムバリストを聴いて

冒頭文

ジムバリストの演奏をきき、深く心に印されたことは、つまり芸術は、どんな種類のものでも、真個のよさに至ると、全く同じような感動、絶対性を持っていると云うことです。自分は、まるで素人で、楽譜に対する知識さえ持っていませんでした。けれども、音に、胸から湧く熱と、精神の支配力との調和が、驚くほど現れ、小説で、所謂技巧内容と云う考えの区別のしかたに、新しい眼を開かせられました。 一九二二年六月

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人之友」1922(大正11)年6月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日