ことり
小鳥

冒頭文

午後から日がさし、積った白雪と、常磐木、鮮やかな南天の紅い実が美くしく見える。 机に向っていると、隣の部屋から、チクチク、チチと小鳥の囀りが聞えて来る。二三日雪空が続き、真南をねじれて建った家には、余り充分日光が射さなかった。寒さや陰気さで縮んでいた彼等は、久し振りに障子もあけて置ける暖かさでさぞ嬉しいのだろう、雨だれの音、小鳥の声が、入り混り優しく響く。 全く、彼等の天候に支

文字遣い

新字新仮名

初出

「明星」第6号、1922(大正11)年4月1日発行

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日