ふかくしずかにかくじのみちをみいだせ
深く静に各自の路を見出せ

冒頭文

静に考えて見ると、我々人類の生活に於ては、既に両性の差別と、その間に性的交渉の存する限り、種々な結婚生活の破綻や恋愛の難問題が起って来るのは、已むを得ない事実ではあるまいかと思う。 然し、それ等の事実に対する当事者、周囲の心の態度は、或る時代、社会によっていろいろに異う。今日、我々はどう考えても、ヘレナ一人のために、二つの部族と神々まで加えた戦争を惹起するような空想は、たとい一種のロマン

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人公論」1921(大正10)年12月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日