かじのはは
鍛冶の母

冒頭文

一 土佐の国の東端、阿波の国境(くにざかい)に近い処に野根山と云う大きな山があって、昔は土佐から阿波に往く街道になっていた。承久の乱後土佐へ遷御せられた後土御門上皇も、この山中で大雪に苦しまれたと云うことが「承久記」の中にも見えている。旧幕の比(ころ)は土佐藩で岩佐の関と云う関所を置いてあった。これは土阿の国境に聳立った剣山や魚梁瀬(やなせ)山の脈続きで、山の中の高い処は海抜四千一百五十尺も

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の怪談(二)
  • 河出文庫、河出書房新社
  • 1986(昭和61)年12月4日