さけのたたり
鮭の祟

冒頭文

常陸と下総との間を流れた大利根の流れは、犬吠崎の傍で海に入っている。それはいつのことであったか判らないが、未だ利根川に数多(たくさん)の鮭が登って鮭漁の盛んな比(ころ)のことであった。銚子に近い四日市場と云う処に貧しい漁師があって、鮭の期節になると、女房を対手にして夜の目も寝ずに鮭を獲っていた。 利根川の口に秋風が立って、空には日に日に鱗雲が流れた。もう鮭の期節が来たのであった。貧しい漁

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の怪談(二)
  • 河出文庫、河出書房新社
  • 1986(昭和61)年12月4日