高知県高岡郡の奥の越知と云う山村に、樽の滝と云う数十丈の大瀑(おおだき)がある。それは村の南に当る山腹にある瀑で、その北になったかなりの渓谷を距てた処には安徳天皇の御陵伝説地として有名な横倉と云う山がある。初夏の比(ころ)その横倉山から眺めると、瀑は半ば以上を新緑の上に見せて、その銀色の大樽を倒(さか)しまにしたような水が鼕々(とうとう)として落ちているので、土地の人は大樽と呼んでいる。