ふどうぞうのゆくえ
不動像の行方

冒頭文

本話 寒い風に黄ばんだ木の葉がばらばらと散っていた。斗賀野の方から山坂を越えて来た山内監物(けんもつ)の一行は、未明からの山稼ぎに疲労し切っていた。一行は六七人であった。その中には二疋の犬が長い舌を出し出し交っていた。路の右手に夕陽を浴びた寺の草屋根が見えて来た。 「あすこに寺があったかなあ」と、監物は銃を左の肩に置きかえて云った。 「ありました。あれは清龍寺の末寺で積善寺といいます

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の怪談(二)
  • 河出文庫、河出書房新社
  • 1986(昭和61)年12月4日