お種は赤い襷をかけ白地の手拭を姉様冠(かぶ)りにして洗濯をしていた。そこは小さな谷川の流れが岩の窪みに落ち込んで釜の中のようになった処であった。お種は涼しいその水の上に俯向いて一心になって汚れ物を揉んでいた。 そこは土佐の高岡郡、その当時の佐川領になった長野から戸波(へは)へ越す日浦坂の麓であった。そして、お種の洗濯している谷川の流れは、日浦坂の上にある、ほど落ちと云う池から来ているもの