うすこうばい
薄紅梅

冒頭文

一 麹町(こうじまち)九段——中坂(なかざか)は、武蔵鐙(むさしあぶみ)、江戸砂子(えどすなご)、惣鹿子(そうかのこ)等によれば、いや、そんな事はどうでもいい。このあたりこそ、明治時代文芸発程の名地である。かつて文壇の梁山泊(りょうざんぱく)と称えられた硯友社(けんゆうしゃ)、その星座の各員が陣を構え、塞頭(さいとう)高らかに、我楽多文庫(がらくたぶんこ)の旗を飜(ひるがえ)した、編輯所(へ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 泉鏡花集成10
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1996(平成8)年7月24日