るこうしんそう
縷紅新草

冒頭文

一 あれあれ見たか、  あれ見たか。 二つ蜻蛉(とんぼ)が草の葉に、 かやつり草に宿をかり、 人目しのぶと思えども、 羽はうすものかくされぬ、 すきや明石(あかし)に緋(ひ)ぢりめん、 肌のしろさも浅ましや、 白い絹地の赤蜻蛉。 雪にもみじとあざむけど、 世間稲妻、目が光る。  あれあれ見たか、    あれ見たか。 「おじさん——その提灯(ちょうちん)……」

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 泉鏡花集成9
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1996(平成8)年6月24日