とうみょうのまき
灯明之巻

冒頭文

一 「やあ、やまかがしや蝮(まむし)が居(お)るぞう、あっけえやつだ、気をつけさっせえ。」 「ええ。」 何と、足許(あしもと)の草へ鎌首が出たように、立すくみになったのは、薩摩絣(さつまがすり)の単衣(ひとえ)、藍鼠(あいねずみ)無地の絽(ろ)の羽織で、身軽に出立(いでた)った、都会かららしい、旅の客。——近頃は、東京でも地方でも、まだ時季が早いのに、慌てもののせいか、それとも値段が安い

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 泉鏡花集成9
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1996(平成8)年6月24日