こんにゃくぼん
菎蒻本

冒頭文

一 如月(きさらぎ)のはじめから三月の末へかけて、まだしっとりと春雨にならぬ間を、毎日のように風が続いた。北も南も吹荒(ふきすさ)んで、戸障子を煽(あお)つ、柱を揺(ゆす)ぶる、屋根を鳴らす、物干棹(ものほしざお)を刎飛(はねと)ばす——荒磯(あらいそ)や、奥山家、都会離れた国々では、もっとも熊を射た、鯨を突いた、祟(たた)りの吹雪に戸を鎖(さ)して、冬籠(ごも)る頃ながら——東京もまた砂埃

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 泉鏡花集成6
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1996(平成8)年3月21日