かばんのかい
革鞄の怪

冒頭文

一 「そんな事があるものですか。」 「いや、まったくだから変なんです。馬鹿々々しい、何、詰(つま)らないと思う後(あと)から声がします。」 「声がします。」 「確かに聞えるんです。」 と云った。私たち二人は、その晩、長野の町の一大構(あるおおがまえ)の旅館の奥の、母屋(おもや)から板廊下を遠く隔てた離座敷(はなれざしき)らしい十畳の広間に泊った。 はじめ、停車場(ステイショ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 泉鏡花集成6
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1996(平成8)年3月21日