かげろうざ
陽炎座

冒頭文

一 「ここだ、この音なんだよ。」 帽子(あたま)も靴も艶々(てらてら)と光る、三十ばかりの、しかるべき会社か銀行で当時若手の利(き)けものといった風采(ふう)。一ツ、容子(ようす)は似つかわしく外国語で行こう、ヤングゼントルマンというのが、その同伴(つれ)の、——すらりとして派手に鮮麗(あざやか)な中に、扱帯(しごき)の結んだ端、羽織の裏、褄(つま)はずれ、目立たないで、ちらちらと春風にち

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 泉鏡花集成6
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1996(平成8)年3月21日