ぎけつきょうけつ
義血侠血

冒頭文

一 越中高岡(たかおか)より倶利伽羅下(くりからじた)の建場(たてば)なる石動(いするぎ)まで、四里八町が間を定時発の乗り合い馬車あり。 賃銭の廉(やす)きがゆえに、旅客はおおかた人力車を捨ててこれに便(たよ)りぬ。車夫はその不景気を馬車会社に怨(うら)みて、人と馬との軋轢(あつれき)ようやくはなはだしきも、わずかに顔役の調和によりて、営業上相干(あいおか)さざるを装えども、折に触

文字遣い

新字新仮名

初出

「読売新聞」1894(明治27)年11月1日~30日

底本

  • 高野聖
  • 角川文庫、角川書店
  • 1971(昭和46)年4月20日改版初版