いぬものがたり
犬物語

冒頭文

俺かい。俺は昔(むか)しお万の覆(こぼ)した油を甞(な)アめて了つた太郎どんの犬さ。其俺の身の上咄(ばな)しが聞きたいと。四つ足の俺に咄して聞かせるやうな履歴があるもんか。だが、人間の小説家さまが俺の来歴を聞くやうでは先生余程窮したと見えるね。よし〳〵一番大気㷔を吐かうかな。 俺は爰(ここ)から十町離れた乞丐(こじき)横町の裏屋の路次の奥の塵溜(ごみため)の傍(わき)で生れたのだ。俺の母

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆76 犬
  • 作品社
  • 1989(平成元)年2月25日