いぬ

冒頭文

長い〳〵話をつゞめていふと、昔天竺に閼迦衛奴国といふ国があつて、そこの王を和奴々々王といふた、此王も此国の民も非常に犬を愛する風があつたが、其国に一人の男があつて王の愛犬を殺すといふ騒ぎが起つた。其罪でもつて此者は死刑に処せられたばかりで無く、次の世には粟散辺土の日本といふ嶋の信州といふ寒い国の犬と生れ変つた。ところが信州は山国で肴などいふ者は無いので、此犬は姨捨山へ往て、山に捨てられたのを喰ふて

文字遣い

新字旧仮名

初出

「ホトトギス 第3巻第4号」1900(明治33)年1月10日

底本

  • 日本の名随筆76 犬
  • 作品社
  • 1989(平成元)年2月25日