においのしゅりょうしゃ
香ひの狩猟者

冒頭文

1 幽かに香ひはのぼる。蕾のさきが尖つてゐるのは内からのぼる香ひをその頂点でくひとめてゐるのだ。花がひらいた時は香ひもひらいてしまふ。残りの香のみの花を人は観てゐる。     2 開いた朝顔が萎(しな)へると蕾のやうになる。それもちぢれて蕾の巻いた尖りは喪はれ、香ひのみか色までが揉みくちやだ。その上に落ち散つた象(すがた)を紙巻煙草の吸殻のやうだといへば乾く。火鉢の灰の中に散らばる紙巻煙草の

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆48 香
  • 作品社
  • 1986(昭和61)年10月25日