しゅっぽん
出奔

冒頭文

まずい朝飯をすますと登志子は室に帰っていった。縁側の日あたりに美しく咲きほこっていた石楠花ももういつか見る影もなくなった。 この友達の所へ来てちょうどもう一週間は経ってしまった。いつまでもここにいる訳には行かないのだにどうしたらいいのだろう。なぜあの時すぐに博多から上りに乗ってしまわなかったろう、わずかな途中の不自由とつまらない心配のために、こんな所に来てしまって進退はきわまってしまった

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 伊藤野枝全集 上
  • 學藝書林
  • 1970(昭和45)年3月31日