げんだん
幻談

冒頭文

こう暑くなっては皆さん方(がた)があるいは高い山に行かれたり、あるいは涼(すず)しい海辺(うみべ)に行かれたりしまして、そうしてこの悩ましい日を充実した生活の一部分として送ろうとなさるのも御尤(ごもっと)もです。が、もう老い朽(く)ちてしまえば山へも行かれず、海へも出られないでいますが、その代り小庭(こにわ)の朝露(あさつゆ)、縁側(えんがわ)の夕風ぐらいに満足して、無難に平和な日を過して行けると

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 幻談・観画談 他三篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1990(平成2)年11月16日