がんたいき |
| 眼帯記 |
冒頭文
ある朝、眼をさましてみると、何が重たいものが眼玉の上に載せられているような感じがして、球を左右に動かせると、瞼の中でひどい鈍痛がする。私は思いあたることがあったので、はっとして眼を開いてみたが、ものの十秒と開いていることができなかった。曇った朝、まだ早くだったので、光線は柔らかみをもっているはずだったのに、私の眼は鋭い刃物を突きさされたような痛みを覚えるのだ。眼をつぶったまま、充血だな、と思いなが
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- いのちの初夜
- 角川文庫、角川書店
- 1959(昭和34)年9月15日、1979(昭和54)年7月30日改版18版