ああぎょくはいにはなうけて
ああ玉杯に花うけて

冒頭文

一 豆腐屋(とうふや)のチビ公はいまたんぼのあぜを伝ってつぎの町へ急ぎつつある。さわやかな春の朝日が森をはなれて黄金(こがね)の光の雨を緑の麦畑に、黄色な菜畑に、げんげさくくれないの田に降らす、あぜの草は夜露からめざめて軽やかに頭を上げる、すみれは薄紫(うすむらさき)の扉(と)を開き、たんぽぽはオレンジ色の冠(かんむり)をささげる。堰(せき)の水はちょろちょろ音立てて田へ落ちると、かえるはこ

文字遣い

新字新仮名

初出

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

底本

  • ああ玉杯に花うけて/少年賛歌
  • 講談社大衆文学館文庫、講談社
  • 1997(平成9)年10月20日