てんき
転機

冒頭文

一 不案内な道を教えられるままに歩いて古河の町外れまで来ると、通りは思いがけなく、まだ新らしい高い堤防で遮られている道ばたで、子供を遊ばせている老婆に私はまた尋ねた。老婆はけげんな顔をして私達二人の容姿に目を留めながら、念を押すように、今私のいった谷中村という行く先きを聞き返しておいて、 「何んでも、その堤防を越して、河を渡ってゆくんだとかいいますけれどねえ。私もよくは知りませんか

文字遣い

新字新仮名

初出

「文明批判 第一巻第一号、第二号」1918(大正7)年1月、2月

底本

  • 伊藤野枝全集 上
  • 學藝書林
  • 1970(昭和45)年3月31日