がいとう
外套

冒頭文

ある省のある局に……しかし何局とはっきり言わないほうがいいだろう。おしなべて官房とか連隊とか事務局とか、一口にいえば、あらゆる役人階級ほど怒りっぽいものはないからである。今日では総じて自分一個が侮辱されても、なんぞやその社会全体が侮辱されでもしたように思いこむ癖がある。つい最近にも、どこの市だったかしかとは覚えていないが、さる警察署長から上申書が提出されて、その中には、国家の威令が危殆(きたい)に

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 外套・鼻
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1938(昭和13)年1月20日、1965(昭和40)年4月16日第20刷改版