こはるのきつね
小春の狐

冒頭文

一 朝——この湖の名ぶつと聞く、蜆(しじみ)の汁で。……燗(かん)をさせるのも面倒だから、バスケットの中へ持参のウイスキイを一口。蜆汁にウイスキイでは、ちと取合せが妙だが、それも旅らしい。…… いい天気で、暖かかったけれども、北国(ほっこく)の事だから、厚い外套(がいとう)にくるまって、そして温泉宿を出た。 戸外の広場の一廓(ひとくるわ)、総湯の前には、火の見の階子(はし

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 泉鏡花集成7
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1995(平成7)年12月4日