はんとういっきしょう
半島一奇抄

冒頭文

「やあ、しばらく。」 記者が掛けた声に、思わず力が入って、運転手がはたと自動車を留めた。……実は相乗(あいのり)して席を並べた、修善寺の旅館の主人の談話を、ふと遮った調子がはずんで高かったためである。 「いや、構わず……どうぞ。」 振向いた運転手に、記者がちょっとてれながら云ったので、自動車はそのまま一軋(ひときし)りして進んだ。 沼津に向って、浦々の春遅き景色を馳(は

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 泉鏡花集成8
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1996(平成8)年5月23日