みさごのすし
みさごの鮨

冒頭文

一 「旦那(だんな)さん、旦那さん。」 目と鼻の前(さき)に居ながら、大きな声で女中が呼ぶのに、つい箸(はし)の手をとめた痩形(やせがた)の、年配で——浴衣に貸広袖(かしどてら)を重ねたが——人品のいい客が、 「ああ、何だい。」 「どうだね、おいしいかね。」 と額で顔を見て、その女中はきょろりとしている。 客は余り唐突(だしぬけ)なのに驚いたようだった。——少い経験

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 泉鏡花集成7
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1995(平成7)年12月4日