はくしゃくのかんざし
伯爵の釵

冒頭文

一 このもの語(がたり)の起った土地は、清きと、美しきと、二筋の大川、市の両端を流れ、真中央(まんなか)に城の天守なお高く聳(そび)え、森黒く、濠(ほり)蒼(あお)く、国境の山岳は重畳(ちょうじょう)として、湖を包み、海に沿い、橋と、坂と、辻の柳、甍(いらか)の浪の町を抱(いだ)いた、北陸の都である。 一年(ひととせ)、激しい旱魃(かんばつ)のあった真夏の事。 ……と言う

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 泉鏡花集成7
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1995(平成7)年12月4日