一 エヽ講談の方の読物は、多く記録、其の他(た)古書等(とう)、多少拠(よりどころ)のあるものでござりますが、浄瑠璃や落語人情噺に至っては、作物(さくぶつ)が多いようでござります。段々種を探って見ると詰らぬもので、彼(か)の浄瑠璃で名高いお染久松のごときも、実説では久松が十五、お染が三歳(みッつ)であったというから、何(ど)うしても浮気の出来よう道理がござりませぬ。久松が十五の時、主人の娘お