かんおけのはなよめ |
| 棺桶の花嫁 |
冒頭文
1 春だった。 花は爛漫(らんまん)と、梢に咲き乱れていた。 時が歩みを忘れてしまったような、遅い午後—— 講堂の硝子窓のなかに、少女のまるい下げ髪頭が、ときどきあっちへ動き、こっちへ動きするのが見えた。 教員室から、若い杜(もり)先生が姿をあらわした。 コンクリートの通路のうえを、コツコツと靴音をひびかせながらポイと講堂の扉(ドア)をあけて、なかに這入(はい)っていった。
文字遣い
新字新仮名
初出
「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月
底本
- 海野十三全集 第4巻 十八時の音楽浴
- 三一書房
- 1989(平成元)年7月15日