とうきょうようさい
東京要塞

冒頭文

非常警戒 凍りつくような空(から)っ風が、鋪道(ほどう)の上をひゅーんというような唸(うな)り声をあげて滑(すべ)ってゆく。もう夜はいたく更(ふ)けていた。遠くに中華そばやの流してゆく笛の音が聞える。 丁度(ちょうど)そのころ、築地(つきじ)本願寺裏から明石町(あかしちょう)にかけて、厳重な非常警戒網が布(し)かれた。 しかし制服の警官はたった二人だけ、あとはみな私服の刑

文字遣い

新字新仮名

初出

「サンデー毎日」毎日新聞社、1938(昭和13)年1月

底本

  • 海野十三全集 第5巻 浮かぶ飛行島
  • 三一書房
  • 1989(平成元)年4月15日